ゼンハイザーのワイヤレスゲーミングヘッドセット「GSP370」をレビュー用にご提供いただいたので、使用感をレビューします。
GSP370は2020年5月に国内発売された新しい機種で、特徴を簡単にまとめると、
- 285gの軽量ボディ
- バッテリー寿命が脅威の「100時間」
- ゼンハイザーらしい音質の良さ
という感じのヘッドセットです。
一般的なワイヤレスヘッドホンのバッテリー寿命はせいぜい20時間程度ですので、連続100時間も鳴らせるというのはちょっと尋常じゃないレベル。
しかもそれを285gの軽量ボディで実現してるというんだから、「軽量かつ長時間駆動」という点ではライバルと呼べる機種なんて今のところ無いのでは…?
当記事は、そんなGSP370を3週間ほど使い倒してみた率直な感想を書いていきます!
GSP370のスペックと外観
スペック
- 接続:低遅延ワイヤレス(2.4GHz通信)
- 動作範囲:約10m
- 重量:285g
- イヤーカップ:オーバーイヤー型(密閉型)
- 周波数応答:20~20,000Hz
- 音圧レベル:117DB
- マイクタイプ:単一指向性
- マイク周波数:100~6,300Hz
- マイク感度:-41DBV/Pa
- バッテリー駆動時間:約100時間
- 対応機器:PC / Mac / PS4
主なスペックは上記の通り。
特筆すべき点は太字にしてみましたが、なんと言ってもバッテリーが100時間持つというのがGSP370の最大の特徴になるかと思います。
これはGSPシリーズのフラッグシップ機であるGSP670をも遥かに上回る数値で、競合メーカーにまで視野を広げてもこんなにバッテリー持ちがいいゲーミングヘッドセットは聞いたことがありません。
「ワイヤレスヘッドセットは充電が面倒くさいんだよね~。本当は欲しいんだけど…」という人はもうこの時点で買いだと思います。
パッケージ
内容物一覧
付属品は至ってシンプルで、替えのイヤーパッドなどは入っておりませんでした。
ヘッドホン本体のデザイン
ヘッドバンドは真ん中が肉抜きされたようなデザイン。
重さが分散されて付け心地も良いですし、この肉抜きのお陰なのかヘッドホン本体はかなり軽量です。(285g)
ぼくの経験上、ヘッドホンを軽いと感じるか重いと感じるかの閾値はだいたい300gあたりがボーダーだと思っています。
その点、GSP370はとても軽く感じるヘッドホンです。
たいていワイヤレスのゲーミングヘッドセットは300gを超えていますし、重たい機種だと350gを超えるものも少なくありません。
世の中には600g超えのヘッドホンなんてものもありますので、そう考えるとGSP370の285gという重量はワイヤレスヘッドセットとは思えないほど軽量な部類に入りますね。
操作ボタンは非常に少なく、右耳側に大きなボリュームダイヤル・左耳側に電源ボタンがあるだけでした。
モード切替ボタンなどは一切なく、耳元で操作できるのは音量だけ。
イコライザーモードの切替やステレオ・サラウンドの切替はすべてPC上のソフトで行うようです。
この点は少し不便だと感じる人もいるかも知れません。
ちなみに充電端子はMicro USB。
(USB-Cだったら尚良かった)
筐体の殆どが樹脂パーツではありますが、ガンメタっぽい塗装がとてもかっこよくて質感は良いです。
イヤーパッドは布とレザーのハイブリッドのような感じ。
耳に当たる部分は布で、側面はレザー。
この特殊なイヤーパッド、密閉性が高いのにも関わらず耳の蒸れがあまり気にならないというぼくの理想にかなり近い装着感で、お世辞じゃなく両者(布とレザー)のいいとこ取りがちゃんと出来ていると思いました。
マイクブームの可動域
このマイクは口のあたりまで持ってくると自動的にオンになり、跳ね上げると自動でミュートになるタイプです。
ブームアームを跳ね上げておけば絶対にミュートになるので、最近オンライン授業や会議が盛んになったことで度々発生する「おい、お前ミュートになってねーぞww」みたいな悲しい事件とは無縁です。
付け心地
ヘッドバンドの調整範囲は狭くはないですが、特別広いほうでもないと思います。
ぼくは普段から同メーカーのHD599SE(HD598のAmazon限定モデル)を愛用していますが、同じメーカーでもHD599SEのほうがバンドの調整幅は圧倒的に広いです。
まぁHD599SEは結構頭がデカいぼくでもまだまだ余裕があるくらいバンドが伸びるのでそっちが特殊なのかもしれませんが、それと比べるとGSP370は至って普通の調整幅。
普通に着ける分にはほとんどの人が問題ないと思いますが、パーカーのフードの上やキャップの上から付けられるほどの余裕はないと思ったほうが良いかも。
ヘッドバンドの肉抜きによって頭に触れる部分が分散されているおかげか、長時間付けっぱなしにしたときの頭頂部の痛みがほとんど無いことに気づきました。
ぼくは側圧よりも頭頂部の痛みの方が先に来るタイプなので、GSP370の付け心地はとても快適です。
ただしそのかわり?と言うか、側圧はわりと強めな方だと思います。
側圧によって側頭部が痛くなるタイプの人は注意したほうが良いかも。
GSP370で出来ること
スペックの数値であれこれ書いても分かりにくいと思うので、シンプルに「GSP370は何が出来るヘッドセットなのか」という視点で機能を紹介してみます。
連続100時間以上使うことが出来る
まずGSP370の最大の特徴と言えば充電せずに100時間連続で使えるという点。
一般的なワイヤレスヘッドホンのバッテリー持ちはせいぜい10~20時間くらいなので、100時間というのは文字通り桁違いのヤバさなんです。
ここまでくると嘘だと思われそうであんまり画像を貼りたくないレベルなんですけど、3時間ぶっ続けで鳴らしても1%すら減らすことが出来ませんでした。
もちろんこのバッテリー表記が正確じゃなく、あとからドカッと減るパターンかもしれませんが、この記事を書く1週間前にフル充電してから1回も充電してないのであながち嘘ではないかと…。
GSP 370の場合,実際は100時間より長くプレイできるかもしれませんが,より確実なように,手堅く言います。
と、メーカーの人が言っているくらいですので、100時間駆動というのは誇張でも何でもないのでしょう。
これまでのワイヤレスヘッドセットとは完全に次元が違うので、駆動時間を重視するユーザーにおすすめを聞かれたら「今はGSP370一択」と言っていいレベルです。
7.1chサラウンドモードがある
GSP370は専用ソフトにて7.1chバーチャルサラウンド機能を有効にすることが出来ます。
これは擬似的にサラウンドを再現した「バーチャルサラウンド」ではありますが、空間表現(音の広がり感)が格段に良くなるので映画やゲームの没入感は高まりますね。
しかも面白いのが、「反響レベル」というツマミで音の残響感を調整できるという点。
このツマミを回していくと「音が部屋に響いている感じ(空間エフェクト)」がどんどん強くなり、最大まで回すとまるで教会や体育館で音を慣らしているような強烈な残響感を得ることが出来ます。
あとこれは裏技なんですけど、レースゲームやYoutubeのエンジン音動画を見ながら反響レベルをMAXにすると…乗り物好きの方はお手軽に気持ちよくなれますよ……
イコライザーで音質をいじれる
またこのソフトにはイコライザー機能も付いており、初期状態ではESPORTS・FLAT・MOVIE・MUSICという4つのプリセットから好みの音質を選択できました。
もちろんここから周波数を個別に調節することも可能ですし、自分で作ったイコライザー設定を保存しておくことも可能です。
個人的には音がドンシャリ気味になるMUSICモードが気に入っています。
GSP370は高音の鳴り方がマイルドなので、高音を誇張したドンシャリサウンドとの相性もいい感じですね。
マイク音声にノイズカットをかけられる
更に、アプリ上の「ノイズゲート」というツマミでマイクの音声にノイズカットをかけることも可能。
ノイズカットの強さはツマミで微調整できるので、自分の環境に合わせてかなり細かくチューニングできます。
しかもこれ、最大付近までツマミを回すと小声で喋ったくらいじゃ自分の声すら拾わないレベルで強力に雑音をカットできるので、相当うるさい環境でプレイしている人でも大丈夫。
オンライン授業ような「たまに返事はするけど、基本的には相手の声を聞いてるだけの状態」ではノイズカットを強めにしておくなど、使い道は色々ありそうです。
GSP370で出来ないこと
逆に、GSP370を使っていて「えっこれ出来ないの!?」と思った点は、
- MacやPS4ではイコライザーやマイクのノイズカットが使えない
ですね。
というのも、音質などをいじる専用ソフトSennheiser Gaming SuiteがWin10専用のアプリなんです。
しかもGSP370は、ヘッドホン本体に「モード切り替え」的な物理ボタンがひとつもないため、モードを切り替えたりするには必ずソフトウェア上から操作する必要があります。
要するに、MacやPS4ではイコライザーやマイクの音質強化機能が一切使えないんです。
これは、かなり割り切った仕様ですね。
リビングのソファに座ってゆったりPS4をプレイするような時こそケーブルが無い「ワイヤレスヘッドセット」の強みが生かされると思うんですが、PS4ではサラウンド機能や音質モードの切替は一切できず、デフォルトの音質で使うしかないようです。
まぁデフォルトの音質もめちゃめちゃ良いので分かったうえで使うなら何の問題もないのですが、そうは言ってもPS4でサラウンド機能すら使えないというのはちょっと勿体無いような気もします。
GSP370の音質レビュー
GSP370の音質の傾向は以下の通り。
- ゼンハイザーらしいフラットサウンド
- サ行が刺さらない高音
- 設定次第で低音をかなりブーミーにも出来る
- 密閉型っぽいサウンドで、音場の広さ(広がり感?)はそれほど感じない
ワイヤレスだから・ゲーミングだからといって音が悪いということは一切無く、ゼンハイザーらしいクリアな音です。
ぼくは普段ゼンハイザーの開放型ヘッドホンHD599 SEを愛用しているのですが、同じメーカー&価格帯も近いというだけあって音の傾向はわりと近いような気がします。(かたや開放、かたや密閉という違いはありますが)
わずかに高音がカットされていて”サ行の刺さり”が抑えられてはいるものの、基本的には全音域がフラットに聞こえるモニターライクな音。
ワイヤレスヘッドホンにこれ以上何を求める?というくらい音の解像度も高く、音楽視聴用ヘッドホンとしても非常に優れていると思いました。
この音質を考えると約2万6000円という定価は十分納得できる価格ですね。
また、イコライザー設定で低音を強調してやるとかなりブーミーなサウンドにもできるので、ガツンと強い低音が好きな人も満足できると思います。
FPSの足音の聞こえやすさもチェックしてみました。
使わせていただいたのは上記の動画。
当たり前ですが、前後・左右・上下・距離感、すべて何の問題もなく聞き取れます。
まぁこの価格帯のヘッドホンなら当然ですね。
しかし高音の鳴り方がマイルド(サ行が刺さらない感じ)なので、武器チェンのカチャカチャ音やボム設置の「ピッピッ…」みたいな高音が敏感に聞こえるような音質ではないですね。
単純に足音の聞こえやすさだけで言うなら、先日レビューした足音がめちゃくちゃ聞こえるイヤホン「ゼンハイザー IE40」には一歩及ばずという感じです。
ただし、それはデフォルトのFLATモードでの話。
GSP370はSennheiser Gaming Suiteというソフトを使うと音質プリセットを変更することが出来ます。
その中にESPORTS(TREBLE)というモードがあるのですが、これを選択すると高音域が強調された「足音が聞き取りやすいサウンド」になるんです。
ESPORTSモードにした状態で先ほどの動画を再生してみると、武器が揺れるカチャカチャした音やピッという電子音が如実に聞こえやすくなりました。
その分低音がカットされてしまうのでこれで音楽を聞くとスカスカで微妙なんですが、FPSゲームで勝ちを狙っていくときにはFLATモードよりは明らかに有利に戦えるはずです。
ただし注意点としては、このイコライザーが使えるのはWindows10のみという点。
さきほども書きましたが、PS4やMacではこのSennheiser Gaming Suiteというソフト自体が使えないので、音質モードを切り替えることが出来ません。
基本的にはWindowsユーザーのためのヘッドセットという位置づけなんでしょうね。
まとめ
- バッテリー100時間は嘘じゃなかった。というかむしろ控えめな表記だった
- ゼンハイザーらしいクリアなフラットサウンド
- 音質をいじったりマイクのノイズカットが使えるのはWindows10のみ
音楽視聴目的で購入しても普通に満足できちゃう高音質なヘッドセットだと思いました。
いかにも”ゲーミング”っぽい極端なイコライズがされておらず、こういう素直な音質のヘッドセットはゲーミング界隈では逆に貴重ですね。
Sennheiser Gaming SuiteがWindows10でしか使えないので「全員におすすめ」とまでは言えませんが、間違いなくこれからのゲーミングヘッドセットのスタンダードになるような機種だと思います。
正直、性能を考えるともっと高くてもおかしくないので、これが2万円台前半で買えるのは常時セール状態と言っても過言ではないですね。
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