リフレッシュレートが360HzになったZOWIE XLシリーズの最新モデル「XL2566K」をレビュー用に提供してもらったので、使用感をチェックしていきます!
XL2566Kの商品概要
XL2566KはZOWIE XLシリーズの最新モデル。
ざっと特徴を並べると以下の通り。
- パネル:24.5インチ TNパネル
- リフレッシュレート:360Hz
- 残像低減機能「DyAc+」搭載
- メモリー機能付きリモコン「S.Switch」付属
- 暗所を明るく表示する「Black eQualizer」搭載
- FPSゲーマーの机に最適な小さめスタンド
- ヘッドホンハンガー搭載
- 視界を制限して集中力を上げる「アイシールド」付属
下位モデルであるXL2546Kは当ブログでも以前レビューしました。
今回レビューするXL2566Kは「リフレッシュレートが360Hzにアップした」というのが大きな特徴で、ここに価値を感じる人向けの商品です。
それでは実機を開封して質感を見ていきます。
開封・質感チェック
内容物は
- モニター本体
- アイシールド(左右につける耳たぶのような部品)
- S.Switch
- ケーブル類
- 持ち運び用のカバー
- 取説類
という構成。前作XL2546Kと全く同じです。
メーカーロゴすら一切書いてないシンプルすぎるデザイン。だがそれがいい。
持ち運び用のハンドルがついているスタンド。BENQはこの意匠多いですけど便利ですよ。
HDMIが2ポート、DPが1ポート。
S.Switch。
これ実はただのリモコンではなくて、設定ファイルを保持しておくメモリとしての機能もあるんです。なにげに重要パーツです。
たとえば自分をプロゲーマーと仮定した場合、大会会場にXL2546KないしXL2566Kがあると確実にわかっている場合は、S.Switchを自宅から持参して会場のXLシリーズに接続すれば自分のモニター設定がすぐに反映されるんです。
これ地味にすごいです。
モニターの可動域はこんな感じ。モニターアームを導入する必要がないぐらいよく動きます。
正面から見たときの色は結構いい
では次は映りを見ていきます。
XLシリーズの欠点は「画質が悪いこと」とよく言われます。実際良くはないですね。
確かにTNパネルは視野角が狭いので、斜め方向から視聴したときの破綻は激しめ。
でも正面から普通に視聴したときの色の再現性は、実はそこまで悪くないんですよね。
モードによっては原色からかけ離れた色合いになるので、なんじゃこりゃあ!と思う気持ちも分かります。でも標準や動画モードの色合いはかなりナチュラルだと思うんです。
安いTNパネルだと、黄色が黄緑色っぽかったり、赤がマゼンダっぽかったり、海外のお菓子みたいなショッキングな発色にしかならないモニターもあったりします。
でもXLシリーズに採用されているTNパネルはよく調整されており、写真や動画のカラーコレクション作業でもしない限りはそこまで不満を感じる色合いではないと思います。
暗所を明るく補正するBlack eQualizerという機能も、他社の同様機能に比べてかなり強めに効く印象。
こういった設定を色々駆使して、自分好みの(極端な)画質に設定できるのがXLシリーズの特徴です。
しかし裏を返せば設定の仕方がよく分からない人にとってはとんでもない色になっちゃうモニターでもあります。
知らぬ間にColor Vibranceをいじってしまうと画面が極彩色のどぎつい色になりますし、Black eQualizerをオフにし忘れると画面が白っぽくなって黒が表示されなくなります。
しっかり設定を理解して自分好みの設定を見つけることが重要ですね。
ただまあ、斜め方向から見たときの色の破綻は擁護のしようがありません。
特に上下方向の視野角が極端に狭いため、背筋をぴんと立てた姿勢とリクライニングを倒した姿勢では全く色の見え方が違いますね。
あくまでゲームに特化したモニターという割り切りは必要です。
XL Setting to Shareでプロ選手の画面設定をダウンロードできる
XL2566Kは「XL Setting to Share」というソフトウェアに対応しています。
これはその名の通りモニターの設定をシェアするためのソフトで、人の設定を自分のモニターに反映させたり、自分の設定をネット上に公開することが可能。
ZOWIE公式でもゲームごとのプロファイルを豊富に用意してくれてあるので、まずは公式プロファイルをいくつか試してみるだけでも楽しめるでしょう。
また、一部のプロ選手のXL Settingがネット上に公開されています。憧れの選手の設定を自分のモニターにインストールすることが出来るため、競技シーンファンボーイには嬉しい機能ですね。
詳しい使い方は下記の記事にて解説しています。
残像テスト(動画あり)
XLシリーズを買う人が求めるのはなんといっても「映像のヌルヌルさ」だろうということで、残像感がよく分かるスロー動画を撮影してみました。
- 240Hz DyAc+なし
- 240Hz DyAc+あり
- 360Hz DyAc+なし
- 360Hz DyAc+あり
という条件で残像のテストをしてみました。(画面の点滅に注意)
240HzのほうがDyAc+のオンオフが分かりやすいですね。DyAc+オンで明らかに残像が減ります。
360HzはDyAc+がオフでも十分に残像が抑えられている感覚があり、正直言ってDyAcをオンにしてもあまり差を感じません。なんとなく良くなった気はするけど、感動するほどの差はないというか。
僕の動体視力だと、ブラインドテストで360HzのDyAc+オンオフを言い当てることは出来ないかも…と感じました。まぁDyAc+オフでも十分に残像が少ないというのは良いことなんですけどね。
(逆に言えば240Hzだと言い当てられる自信が沸いてくるぐらい差を感じます)
DyAc™ / DyAc+ ™ は、モーションブラーを軽減するためにBenQ ZOWIEによって設計されたテクノロジーです。 ゲーム中の激しい画面の揺れを軽減し、CS:GOのリコイルコントロールを改善するのに役立ちます。 それは人によって異なり、その差はごくわずかですが、競技シーンにおいて1%の違いを生み出します。
https://zowie.benq.com/ja-jp/what-is-dyac.html
公式サイトにもこう書いてあるとおり、「たかが1%、されど1%」というつもりで購入するのが良いんじゃないかと思います。
競合製品との比較
競合製品と比較して、XL2566Kはどのような立ち位置のモニターなのか?を考察していきます。
突如出現した黒船「OLED」との比較
2023年のゲーミングモニター市場はこれまでとは一味違います。
なぜなら有機EL(OLED)パネルのゲーミングモニターがすごい勢いで性能アップしており、ついに240Hzで動くモデルが登場したからです。
例えばこれなど。
OLEDは構造的に「応答速度」「入力遅延」がTNパネルよりも断然速く、なおかつ画質も非常に良いという特性があります。
TNパネルの特徴
- 応答速度:0.5ms
- 残像:少ない
- 視野角:とても狭い
- 色合い:良いとは言えない
- 安価
OLEDの特徴
- 応答速度:0.03ms
- 残像:ない
- 視野角:とても広い
- 色合い:圧倒的に綺麗
- 焼き付き現象という固有の問題
- ゲーム向けOLEDは画質がそれほど良くないという指摘
- 高価
XLシリーズが目指す到達点はOLEDのような世界なんじゃないか、と思えるほど、FPSゲーマーにとって魅力的な特性を持っているのがOLEDです。
ただしまだまだ発展途上の技術なので不満点も多く、現状のOLEDモニターはパネルの原価にコストを持っていかれて付属品や機能面がしょぼい傾向にあります。モニター全体の完成度では熟成の極みであるXLシリーズに軍配が上がると思いますね。
XLシリーズはパネルの性能がFPS向きなのはもちろん、アイシールドやS.SwitchなどFPSゲーマーにとって便利な要素が盛り沢山なのも大きな魅力ですから。
そういった意味では直接競合するOLEDモニターはまだ無いと言えるかもしれませんが、向こう数年でゲーミングモニターの状況がガラッと変わるのは間違いないでしょう。
同価格帯のゲーミングモニター
90,000円~120,000円という条件で、同価格帯のゲーミングモニターをいくつか抜粋。
名称 | スペック | 価格 |
---|---|---|
ALIENWARE AW3423DWF | 34インチ 4K OLED 165Hz | ¥108,799 |
ROG Swift OLED PG27AQDM | 27インチ WQHD OLED 240Hz | ¥119,014 |
ROG Strix XG32UQ | 32インチ 4K IPS 160Hz | ¥113,223 |
G3223Q | 32インチ 4K IPS 144Hz | ¥99,799 |
MOBIUZ EX270QM | 27インチ WQHD IPS 240Hz | ¥106,200 |
UltraGear 27GR95QE-B | 27インチ WQHD OLED 240Hz | ¥119,500 |
Predator X25bmiiprzx | 24インチ FHD IPS 360Hz | ¥93,000 |
この価格帯のモニターは4KゲーミングモニターやOLEDモニターなどの高級路線がほとんど。
eスポーツ特化型モニターを10万円の予算で買いたい場合は、ある意味XLシリーズ一択と言えます。
スペックが近いゲーミングモニター
XL2566Kとスペックが近いゲーミングモニターをいくつか抜粋。
名称 | スペック | 価格 |
---|---|---|
NITRO XV252QFbmiiprx | 24インチ FHD IPS 390Hz | ¥77,253 |
G253PF | 24インチ FHD RapidIPS 380Hz | ¥42,800 |
ALIENWARE AW2523HF | 24インチ FHD FastIPS 360Hz | ¥53,801 |
X-360 JN-IPS245FHDR360 | 24インチ FHD IPS 360Hz | ¥54,610 |
Oculux NXG253R | 24インチ FHD RapidIPS 360Hz | ¥59,800 |
UltraGear 25GR75FG-B | 24インチ FHD IPS 360Hz | ¥69,800 |
GigaCrysta LCD-GC251RXAB | 24インチ FHD IPS 360Hz | ¥71,388 |
このリストの中にTNパネルを採用している機種は皆無。XLシリーズがいかに異質な存在なのか分かりますね。
単純にFHD 360Hzというスペックだけが欲しいだけなら、XL2566Kより安価な機種が多いです。
XLシリーズならではの価値(DyAc+やS.Switchなどの付加価値、プロ御用達という権威性)にプラス数万円分の価値を感じるかどうか?が購入する際のポイントと言えるかもしれません。
総合評価:XL2566Kは買うべき?
総評
S.Switchがとても便利で、TNパネルにしては色も自然で、360HzとDyAc+の組み合わせは現状トップクラスの強さを得られます。
XL2546Kの時代までは、XLシリーズがFPS界最強モニターでした。
しかし2023年はこれまでと状況が違います。OLEDパネルの高リフレッシュレート化が一気に進み、OLED 240Hzモニターという強力なライバルが出現したからです。
OLEDはまだまだ発展途上なので、あっちはあっちで不満点もあるみたいですが、XLシリーズのアイデンティティである「残像の少なさ」「応答速度の速さ」というスペックはすでに上回っているというレビューもあります。
熟成のZOWIE XLシリーズか、新興勢力のOLEDか、かなり悩ましい市場状況ですね…。
そんななか、XLシリーズの大きな魅力は「FPSゲームに完全最適化されている」という安心感だと思います。筐体の形から細かい機能に至るまで、XLシリーズの設計はすべてFPSゲーマーのために考えられています。
24.5インチ フルHD 360Hzというスペックも競技ゲーマーにとっては理想的。かたや現状のOLEDゲーミングモニターは27インチ WQHD 240Hzが最もゲーマー向けなモデル。そのあたりも考慮すると、FPSゲームのために買うならまだギリギリXLシリーズに軍配が上がると思います。
おすすめのユーザー層
- 競技レベルでFPSゲームに取り組んでいるガチゲーマー
- OLEDに手を出すのはまだ様子見したい人
勝つために一生懸命ゲームをするのか、楽しみたくてゲームをするのか。XLシリーズは前者のために最適化されたモニターです。ガチ勢には非常におすすめです。
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