ゼンハイザーのイヤホン「IE 40 PRO」をレビューします。
IE40 PROはIEM(In Ear Monitoring)、いわゆる「イヤモニ」と呼ばれるジャンルのイヤホンです。
本来はミュージシャンがライヴで使うようなモノですが、このIE40PROはゲーマーにも人気があることで有名なんです。
というのも、FPSゲームの足音がめちゃくちゃ聞き取りやすいらしいんですよ。
気になって買ってみたので、早速レビューしていきますね!
IE 40 PROのスペックと外観
- タイプ:カナル型
- ドライバ:10mmダイナミックドライバー
- ノイズ減衰:< 26 dB
- ケーブル長:1.3 m
- 重量:18 g
スペック的に珍しいところはなく、ダイナミックドライバを左右に1基ずつ積んだごくごく普通のイヤホンです。
遮音性は最大26dBまでノイズをブロックできるとのことですが、競合としてよく名前が挙がるSHURE SE215は最大37dBまでブロックできる性能があります。
よってIE 40 PROは少なくとも遮音性能を求めて買う商品ではありませんね。
それでは外観を見ていきましょう。
パッケージと付属品
パッケージにもあるとおり、IE40PROはIEM(In-ear monitoring)というジャンルのイヤホンです。
音楽を楽しむというよりは分析的に音を聞きたいミュージシャンのための製品ですね。
カラバリはブラックとクリアがありますが、今回ぼくはクリアを注文しました。
つや消しクリアなのでおもちゃのような安っぽさは特に感じず、普通にかっこいいと思います。
- イヤホン本体
- キャリングケース
- 交換用イヤーチップ
- クリーニングツール
- 取説
内容物は上記の通り。
キャリングケースはかなり小さくて使いづらいので使うことはなさそう…笑
イヤホン本体
イヤホン本体はこのようなデザイン。
いわゆる「SHURE掛け」で装着するタイプのイヤホンで、耳にかける部分の10cmほどが針金のような素材で補強されていました。
この補強のおかげでケーブルが直接耳に当たらないので、補強がない普通のケーブルをSHURE掛けするイヤホンよりはいくらか装着感は良いです。
イヤホン自体の形状もぼくにとっては違和感が少なく、頭を振っても下を向いても抜けそうになる気配はありません。
さすがミュージシャンがステージで使うことを想定してるだけあり、装着安定性は高いですね。
デメリットがあるとしたら、装着するたびにワイヤーをぐにぐにして耳の形に合わせなきゃいけないのが少し面倒かも。
そんなに硬いワイヤーじゃないので、イヤホンを取り外す動作でせっかく作った曲げ具合が崩れますw
ベント(通気孔)が空いているのが特徴
また、IE 40 PROは穴(通気孔)が空いているのが大きな特徴。
この穴のおかげで音抜けが良くなり、イヤホン独特の閉塞感がマシになっているようです。
詳しい音質レビューは後ほど書きますが、たしかにイヤホンにしては開放的な音でヘッドホンに近い聞こえ方だなと思いました。
イヤーピース部分にはスポンジが仕込まれていた
イヤーピースを外してみると、イヤホン本体側・イヤピ側の内部に黒いスポンジが仕込まれていました。
音質に影響があるのか?とも思いましたが、どうやら調べてみるとこのスポンジは汚れ防止(耳垢やホコリがイヤホン内部に入るのを防ぐ)のために入っているだけらしい。
試しに取り外して音を聞いてみたりもしましたが、素人のぼくが気づくほど音に差はなかったです。
音抜けを良くするためにスポンジを外す…みたいなことは特にしなくて良さそう。
イヤーピースの高さを2段階で調節可能
イヤーピースは取り付けの際にカチッカチッと2段階に入っていく構造になっており、高さ調節ができます。
そんなに大差ないだろう…と思うかもしれませんが、個人的にはイヤピを高い位置にセットしたほうが断然付け心地は良かったですね。
また、オーディオマニアの方のレビューを読むと、
- イヤピを高くする…低音の量感が減る、高音もマイルドになる
- イヤピを低くする…低音のキレが増す
と評している記事も見ましたが、ゲームかSpotifyの圧縮音源しか聞かないライトユーザーのぼくからすると普通にどっちも同じ音にしか聞こえませんでしたw
目をつぶって聴き比べでもしない限り、一般人が気づくほどの音質差はないと考えて良いと思います。
ケーブルは脱着式(ただし独自コネクタ)
ケーブルは脱着式でリケーブルが可能です。
差し込み部分も非常にしっかりしていて耐久性はかなり高いように思いました。
ただし難点としてコネクタが独自形状なので、高級ケーブルに付け替えて遊びたいマニアからの評判はあまり良くないようですw
まぁでも個人的にはこのクラスのイヤホンでリケーブルにお金を使うくらいなら普通に上位の機種を買いますかね…
断線したときに自分で直せるってだけで十分なように思います。
付属のイヤーピースは3種類
付属品のイヤーピースは大中小の3種類。
その中で中ぐらいのイヤーピースだけはコンプライのイヤピみたいな低反発スポンジ素材になっていました。
ただ、本物のコンプライほど低反発ではなかったですが。
IE40PROはSHURE掛けのおかげか耳から落ちそうになる感覚があまりないため、個人的には一番小さいイヤピを若干ゆるめで付けるのが好きですね。
ちなみに上記写真の棒状のものはクリーニングツールです。
イヤピに仕込まれている小さいスポンジがズレたときにツンツンして直すために使うんだと思います。
(取説に使い方までは載ってなかった)
IE 40 PROを聞いてみた感想
それではIE 40 PROを音楽やゲームに使ってみた感想を書いていきます。
ちなみに筆者は学生時代に10年ほどバンドをやっていた経験こそありますが音響に関してはズブの素人です。
IE40 PROを聞いてみた感想
- イヤホンとは思えない開放的な鳴り方
- フラットすぎて高音の刺さりが少し気になる
- 細かい音が分かりやすく、ゲームの足音を聞くのに最適かも
音の特性としてはモニターらしいフラットサウンドですが、そんなことよりイヤホンとは思えないほど開放的な鳴り方をしますね、これ!
ぼくは普段ゼンハイザー HD599SEという開放型ヘッドホンを愛用しているのですが、IE40PROのあとにHD599SEを聞くと高音が籠もって聞こえるほどです。
イヤホンに空いているベント(通気孔)が効いているのでしょうか。
イヤホン独特の閉塞的な感じがなく、非常にクリアな音を鳴らしてくれます。
ただあまりにもフラットサウンドすぎるため、高音の不快な刺さり(シャリシャリ感)すら補正無しでそのまんまシャリシャリ鳴らしてくれます。
ローファイな音源や8bitっぽい電子音を聞くと思わず音量を下げたくなるほど高音が不快に感じるときもありますね…
まぁモニターイヤホンというのは「音楽を楽しむ」というよりは「全域を満遍なく鳴らして音の鳴り方を分析する」という用途で使うものなので、これはこれで”良い音”なのでしょう。
ゲーム音を聞いてみた感想
ただ、その高音の刺さりにはいい面もあって、細かい音がやけに聞き取りやすいのです。
要するに、FPSゲームの足音がめちゃくちゃ聞こえます。
試しに下記の動画を使用させていただいてゲームにおける定位を検証してみました。
左右 前後はもちろん丸わかりで、上下や手前奥(距離感)の表現もすごく分かりやすいです。
高音がシャリッてるおかげで46秒あたりから聞こえるボム設置音(カチャッ…ピッ…)も余裕で聞こえました。
しかしまぁこの程度は当然として、特筆すべきは「小さい音の聞こえやすさ」ですね。
遠くの方でかすかに聞こえた「トッ…」のような微小な足音も、IE40PROだと異常によく聞こえます。
よく聞こえると言っても決してデカい音で聞こえるとかではなくて、なんというか「耳毛が揺れる」みたいな感覚として伝わってくるというか…
恐らく高音が少し刺さり気味なおかげで、普通なら埋もれてしまう小さい音も「違和感」としてしっかり感知できるのかなと思いました。
音楽を再生するときにはデメリットに感じた高音の刺さりも、ゲームではメリットなのかも。
ぼくは普段ゼンハイザーHD599SEでゲームをしてて特に不満はなかったのですが、IE40PROの聞こえ方を知ってからHD599SEを使うとなんだかゲーム内の聴覚範囲が1mほど狭まったような気がして不安に感じるようになってしまいました…
IE 40 PROの不満な点
値段を考えたら文句の付けようがないほど優秀なイヤホンですが、ひとつだけ不満というか心配な点があるので書いておきますね。
黒いスポンジを無くすとマズいことになる
記事冒頭でイヤホン内部に黒いスポンジが入っていると書きましたが、このスポンジを無くすと大変なことになります。
というのも、このスポンジを外すとイヤホン内部が丸見えになってしまい、異物が入り放題になってしまうのです。
しかもこのスポンジは特に固定されているわけではなく、何となくこの位置に収まっているだけ。
イヤピを外したときにふわっと飛んでっちゃう可能性もありますし、逆になにかの拍子に押し込んでしまうと細いピンセット的なものを使わないと救出できなくなります。
現にぼくはクリーニングツールの使い方を試していたときに間違えてスポンジを奥に突っ込んでしまい、非常に焦りましたw
眉毛カット用のはさみを突っ込んでなんとか救出できましたが、細くてつまめる道具が身近になかったらと思うと…
まぁ頻繁にイヤーピースを付け替える人でもない限り日頃から心配する必要はありませんが、あまりにも繊細すぎる設計だなあと思いますねw
まとめ
- 1万2000円とは思えないクリアな音質
- 定位が良く、小さな音もしっかり感知できる
- 高音が少し刺さるのが唯一の不満
ミュージジャンから見てどうかは分かりませんがあくまでゲーマー目線で見た場合、これは下手なゲーミングヘッドセットより優秀かもしれないと思いました。
ゲームに最適なのはもちろん、高音の刺さりさえ許容できれば音楽も非常に気持ちよく聞けます。
(むしろ世間的には音楽再生能力の高さで評価されている印象)
普段から開放型ヘッドホンを好んで愛用しているぼくからしてもヌケが良くて開放的な音に感じるので、イヤホン独特の閉塞感が苦手な人にもおすすめですね。
これが1万2000円で買えちゃうのはちょっとゲームバランスおかしい気がします…。
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