TP-LinkからWi-Fi 6に対応した次世代ルーター「Archer AX20」をレビュー用に提供していただいたので、早速試してみました。
ぼくはそもそも「Wi-Fi 6」という言葉自体が初耳だったのですが、どうやらIEEE 802.11axというWi-Fiの新しい規格のことをWi-Fi 6と呼ぶのだそうです。
正式名称は旧規格(IEEE 802.11ac)の末尾がcからxに変わっただけなので、分かりやすくWi-Fi 6という愛称を付けたんでしょう。
で、Wi-Fi 6は具体的にどう進化したのか?と言うと、
- 最大通信速度の理論値が6.9Gbpsから9.6Gbpsへ向上
- 同時接続可能な端末数が802.11acの4倍に増加
- 「OFDMA」機能により、複数端末で同時接続しても速度が落ちにくくなった
- 「BSS Color」機能により、近所との電波干渉を軽減
情報参照元:Wi-Fi 6とは|tp-link.com
などなど、通信速度に関わる部分だけでこんなにアップデートしているようです。
でも、これはあくまで規格の理論値の話。
実際にどの程度のWi-Fi性能が変わるのかは使ってみないと分かりませんので、この記事ではArcher AX20を実際に1週間ほど使用してみた感想を率直にレビューしていきます。
「Wi-Fi 6対応ルーター」の実力が気になる方はぜひ参考にしてみてください。
Archer AX20のスペック・外観
規格 | Wi-Fi 6 IEEE 802.11ax/ac/n/a 5 GHz IEEE 802.11ax/n/b/g 2.4 GHz |
Wi-Fi速度 | AX1800 5 GHz: 1201 Mbps (802.11ax) 2.4 GHz: 574 Mbps (802.11ax) |
Wi-Fi範囲 | 4LDK 4× 高性能固定アンテナ 複数のアンテナが信号を増幅させより多くの方向と広いエリアをカバーします ビームフォーミング クライアントに無線信号を集中させWi-Fi範囲を拡大します 高性能FEM 送信パワーを改善し信号範囲を強化します |
Wi-Fi性能 | 高(High) デュアルバンド 最適なパフォーマンスを得るためにデバイスを異なる帯域へ割り当てます OFDMA 複数のWi-Fi6対応クライアントと同時に通信します エアタイムフェアネス 帯域の過度な占有を制限することによりネットワーク効率を向上させます 4ストリーム デバイスをより多くの帯域幅に接続させます |
動作モード | ルーターモード ブリッジモード |
有線ポート | 1× ギガビットWANポート 4× ギガビットLANポート |
USB対応 | 1× USB 2.0 ポート 対応パーティション形式: NTFS, exFAT, HFS+, FAT32 対応機能: Apple Time Machine FTPサーバー メディアサーバー |
Wi-Fi暗号化 | WPA WPA2 WPA3 WPA/WPA2-Enterprise (802.1x) |
AX20のウリは何と言ってもWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)に対応しているという点ですが、それ以外にもビームフォーミングやエアタイムフェアネスなどの機能によって高速化・安定化を計っているようです。
(実際にどの程度効果があるのかは、後ほど回線スピードテストで検証します)
- ルーター本体
- 電源ケーブル
- LANケーブル(CAT5e)
- 取説類
付属のLANケーブルの長さは1mほど。
ONUから離れた場所にルータを設置したい場合は、長いLANケーブルを自分で用意する必要があります。
この状態で箱に入っておりました。
アンテナの畳まれ方がエモい。
商品名がAX20だから…?
アンテナを整えてみた図。
筐体にもエックスっぽい意匠が施されてますが、ここだけテッカテカな光沢素材なのでホコリが目立ちそう。
インターフェース類はすべて本体背面(縦置きだと上部)に集約されています。
底面。
重さ。
我ながらみみっちいとは思いますが、個人的に気になった点…。
ACアダプタのコンセントの向きは90度回転させたほうが良かったのではないでしょうか。
この向きだと、電源タップに差す時に隣の穴まで潰してしまいます。
端っこに差すしかないですね…。
回線スピードテスト(ONUとの速度対決)
我が家はもともとプロバイダ支給のONU「RS500-KI」のWi-Fi機能を使っていましたので、試しにArcher AX20との回線スピード対決をしてみました。
まずは5GHzのWi-Fiからテストしてみます。
5GHzの速度テスト
テスト1:ルーターの目の前
プロバイダ支給ONU Archer AX20
5GHzを使用 | 下り(ダウンロード速度) | 上り(アップロード速度) |
---|---|---|
RS500-KI | 368 Mbps | 368 Mbps |
Archer AX20 | 338 Mbps | 436 Mbps |
まずはルーターの目の前でスピードテストを実行してみました。
どちらも300Mbps以上出ており、文句なしの爆速です。
少なくともArcher AX20がボトルネックになって速度が落ちるということは無さそうです。
テスト2:4~5m離れた部屋
プロバイダ支給ONU Archer AX20
5GHzを使用 | 下り(ダウンロード速度) | 上り(アップロード速度) |
---|---|---|
RS500-KI | 156 Mbps | 152 Mbps |
Archer AX20 | 199 Mbps | 169 Mbps |
次はルーターが設置してあるリビングから4~5mほど離れたぼくの作業部屋。
さすがにルーターの目の前よりはどちらも遅くなってます。
数値的には微妙にAX20の方が高いという結果となりました。
テスト3:10mほど離れた玄関
プロバイダ支給ONU Archer AX20
5GHzを使用 | 下り(ダウンロード速度) | 上り(アップロード速度) |
---|---|---|
RS500-KI | 60.2 Mbps | 12.3 Mbps |
Archer AX20 | 93.7 Mbps | 69.4 Mbps |
最後に、階段を降りた先にある玄関でテストしてみました。
結果は上記の通り。
「誤差の範囲」とは言い難い差が付きましたね!
勝因はおそらく、Archer AX20には電波を遠くまで飛ばす「ビームフォーミング」という機能がついているからだと思います。
ビームフォーミングとは、子機に向かってピンポイントで直線的に電波を飛ばすという機能。
要するに電波のムダがなくなって飛距離が伸びるというわけです。
プロバイダ支給のONU RS500-KIにはビームフォーミング機能がないので、おそらく距離が離れれば離れるほどAX20との速度差は開いていくでしょうね。
「1階に設置したルータに2階からアクセスする」みたいな場面では、ビームフォーミング機能付きのルーターを使えば回線速度アップを如実に体感できるはずです。
一戸建て住まいの人にはビームフォーミング機能は必須かも?
2.4GHzの速度テスト
上記のテストでは5GHzの電波(速い方)を使いましたが、2.4GHzの電波(遅い方)でもテストをしてみます。
というのも、Wi-Fi 6は2.4GHz帯の通信速度が旧世代(IEEE 802.11n)よりも速くなっているらしいのです。
なので本当に速くなっているのかを検証してみます。
テスト1:ルーターの目の前
プロバイダ支給ONU Archer AX20
2.4GHzを使用 | 下り(ダウンロード速度) | 上り(アップロード速度) |
---|---|---|
RS500-KI | 11.6 Mbps | 43.8 Mbps |
Archer AX20 | 31.7 Mbps | 53.1 Mbps |
まずは同じようにルーターの目の前から。
最初からいきなりRS500-KIの3倍近い下り速度が出てしまいました…。
どうやら「Wi-Fi 6は2.4GHz帯の通信速度が速い」というのは本当みたいですねw
絶対的な通信速度としては5GHz帯に遠く及ばないものの、何らかの理由で2.4GHz帯のWi-Fiを使わざるを得ない人には重要なポイントになりそうです。
テスト2:4~5m離れた部屋
プロバイダ支給ONU Archer AX20
2.4GHzを使用 | 下り(ダウンロード速度) | 上り(アップロード速度) |
---|---|---|
RS500-KI | 1.88 Mbps | 26.7 Mbps |
Archer AX20 | 10.6 Mbps | 35.3 Mbps |
RS500-KIの下り速度1.88Mbpsはヤバイですね…w
スマホの4G回線のほうが速いレベル。
こんな速度じゃYoutubeなどの動画はプツプツ途切れてしまうでしょう。
それに対しAX20は、10Mbpsを何とか死守。
テスト3:10mほど離れた玄関
プロバイダ支給ONU Archer AX20
2.4GHzを使用 | 下り(ダウンロード速度) | 上り(アップロード速度) |
---|---|---|
RS500-KI | 1.19 Mbps | 0.70 Mbps |
Archer AX20 | 12.8 Mbps | 20.0 Mbps |
10mほど離れた玄関に来ると、RS500-KIの通信速度はもはやWebサイトの閲覧すらモタつくレベル。
それに対しAX20は、なんと先程よりも若干高い数値を叩き出しちゃってます。
まぁたまたまタイミングが良かっただけだとは思いますが、少なくともRS500-KIより圧倒的に速度が出ていることは確かですね。
回線スピードテストをしてみた結論
ここまでテストしてきた内容をまとめると、Archer AX20のWi-Fi性能は、
- 「ビームフォーミング機能」により、ルーターから距離が離れても速度が落ちにくい
- 「Wi-Fi 6」の仕様により、2.4GHz帯の通信速度が旧世代のルータより圧倒的に速い
ということが言えると思います。
ビームフォーミング非対応ルーターやWi-Fi 6非対応ルーターから乗り換えると、通信速度の向上が期待できるでしょう。
もちろん環境によりけりなので100%速くなるとは言えませんが、少なくともぼくの家ではAX20を導入したことで如実に通信環境が改善されました。
Wi-Fi 6はまだ本領発揮できてない?
しかし上記のテストでは、忘れてはいけない重要なポイントが隠れています。
それは、5GHz帯の通信速度は別にそれほど速くなってないという点。
Wi-Fi 6の詳しい仕様についてはTP-Linkの解説ページが分かりやすいですが、ざっとまとめると…
- 最大通信速度の理論値が6.9Gbpsから9.6Gbpsへ向上
- 同時接続可能な端末数が802.11acの4倍に増加
- 「OFDMA」機能により、複数端末で同時接続しても速度が落ちにくくなった
- 「BSS Color」機能により、近所との電波干渉を軽減
回線速度に寄与しそうな仕様だけでも、これだけの新機能が追加されているんです。
それを踏まえて考えると、Archer AX20は「Wi-Fi 6対応」という割にはしょぼい結果に終わっているんですよね。
なんでだろう?と色々考えてみたんですが、恐らく、
- おおもとの光通信回線が1Gbpsだから
- 現在普及しているガジェット類がWi-Fi 6に完全対応してるわけじゃないから
という2点が原因じゃないか?と個人的には思いました。
最大通信速度の理論値が9.6Gbpsになったところで、フレッツ光のごく一般的な1ギガビット回線を契約しているぼくにとっては何の意味もない数字です。
2018年頃から東京を中心とした一部エリアでは10ギガビット(10Gbps)の爆速回線が提供され始めていますが、地方在住のぼくが恩恵に預かれるのは数年先でしょう。
あと、ぼくが使っているiPhoneSE2はWi-Fi 6の一部機能(TWTなど)に対応しておらず、Wi-Fi 6に完全対応したスマホではないんですよね。
要するに、周辺環境がまだWi-Fi 6に追いついてないのでは?と思うのです。
「Wi-Fi 6対応ルーター」と聞くと、300Mbpsが700Mbpsになったりして!?とかそんなのを期待しちゃう人も多いと思うんですが(ぼくもそうでした)、現状でそこまで大幅なスペックアップを体感できるほど周辺環境が整っている人は少数派なんじゃないかと思います。
分かった上で購入する分には何の問題もないですが、Wi-Fi 6のことをよく調べずに過度な期待を持ってArcher AX20を購入した人は少しガッカリするかもなぁ~と思ってしまいました。
まとめ
- スペック的には8000円とは思えない豪華さ(Wi-Fi 6/WPA3/VPN対応…など)
- Wi-Fi 6のおかげで2.4GHz帯の通信速度はかなり速くなった!
- ただしWi-Fi 6が本領発揮するのはまだまだ先かも?
スペック的には8000円とは思えない豪華さを誇っており、ぼく自身、レビューをする前はとても期待していたルーターでした。
が…Wi-Fi 6自体がまだまだ普及しきっていない新しい規格なので、
- Wi-Fi 6に完全対応したスマホ(とかPCとか)
- 10ギガビットの爆速回線
を持っている人が少ない2020年9月現在では「まだ本領発揮できてないんじゃない?」と思ったのが正直なところ。
強いて言えば、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)は2.4GHz帯の通信速度が旧世代(IEEE 802.11n)よりも速いため、
- ルーターからの距離が遠い
- 障害物が多い
- 建物の構造的に電波が通りづらい
など何らかの理由で5GHzのWi-Fiが使えない人(2.4GHzを使わざるを得ない人)には、Archer AX20は現時点でも非常におすすめのルーターです。
少なくとも僕の環境ではArcher AX20を導入したことで2.4GHzの回線スピードは確実に速くなりましたので、古いルーターからの乗り換えならかなりの性能アップを体感できると思いますよ。
この記事へのコメント
コメント一覧 (2件)
AX20を購入前後にレビュー等を確認していて、このサイトにたどり着いたのですが、色々気になる点があります
まず、大きな間違い
「Wi-Fi 6は2.4GHz帯の通信速度が旧世代(IEEE802.11ac)よりも速くなっているらしいのです」
IEEE802.11acには2.4GHzの規格はありません
なので、IEEE802.11ac無線LANルータと呼ばれている製品であっても、2.4GHzで接続した場合には、IEEE802.11nになります
IEEE802.11axと比べると2世代前の規格になります
次に「RS500-KI」をONUと書いていますが、ONUとルータが一体型になったHGWです
ONU単体ではありません
ただ、HGWというのはわかった上で、わかりやすくONUという表現をしているだけかも知れませんが
後、どうにも気になっているのですが、これって2重ルーターになっていませんか?
写真を見ると、RS500-KIの後ろに接続してますし
それだと、RS500-KIのWi-Fiに接続した時と比べ、AX20に接続した時には、AX20のルーティングとRS500-KIのルーティングの2重になるので無駄がありますよね
そしてその無駄は速度が速くなれば当然無視できない割合になります
テスト1:ルーターの目の前での結果がほぼ同じというのが気になりましたので
あくまでも想像で話していますが、
「そんなことはわかってるよ! 実際に計測する時は、AX20計測の時はRS500-KIのルーター機能を殺して、RS500-KI計測の時はルータ機能の有効にしているに決まってるだろ!というなら大変失礼な話となってしまいますが
もしくはそこまでしなくてもAX20をAPモードにして試しているのならば接続先を切り替えるだけで確認できますよね
もちろん、APモードではAX20のルータとしての機能を検証できませんが、レビューも哀感と802.11axと802.11acの違いの話だけなので問題無いですよね
どちらにしても、ルータ無効にしてます、APモードで確認してます、の一言も無かったので少し気になってしまいました
唐突な話で申し訳ありませんでしたが、しっかり検証しているのであれば大変失礼します
コメントありがとうございます!
>IEEE802.11acには2.4GHzの規格はありません
ご指摘のとおりです!
IEEE802.11acというワードは通販サイトやルータのパッケージなどによく記載されていて認知度の高いキーワードなので、初心者の方に「要するに今使ってるのよりも速いってことね」とパッと分かってもらうためにあえてそう書いてしまいました。
ただしご指摘のとおり正確な表現ではないので「IEEE802.11ac対応ルータよりも速い」という表現に変えたいと思います。
>「RS500-KI」をONUと書いていますが、ONUとルータが一体型になったHGWです
これも理由は同様です。
誤情報にならない範囲でなるべく認知度が高いワードを使って文章を書きたいという思惑でどうしても文章を書いてしまいます。そのほうがSEO対策にもなるので…
(現にぽぽぽ!さんも「AX20 レビュー」などと検索したら上の方に表示されたからという理由で当サイトを閲覧していただいたのではないでしょうか?)
とはいえ、このようにご指摘を頂いてしまうという事はSEOを意識しすぎて違和感がある文章になってしまったということなので、いい感じに修正しておきたいと思います。
>これって2重ルーターになっていませんか?
もちろんAX20の計測をする時はRS500-KIのWi-Fi機能はオフにしています。
確かにこのようなテストをする時は前提条件をしっかり書くのが定石かと思いますので、記載しておきます。
>唐突な話で申し訳ありません
とんでもございません、個人でブログを運営していると文章を校閲してくれる人間が上流にいるわけではないので、スルーせずにコメントしてくれる方のご意見は喉から手が出るほど欲しいものなのです…
どうもありがとうございました!