TP-LinkのWi-Fi 6ルーター「Archer AX80」をレビュー用に提供してもらったので、性能をチェックしていきます。
本製品が特徴的なのは「ストリーム数の多さ」で、ミドルレンジの製品は4ストリームが主流のところ、AX80はなんと8ストリーム(5GHzが4×4 , 2.4GHzが4×4)の通信に対応。
ストリームとは「電波を送受信するアンテナの数」みたいな意味で、アンテナの本数が多ければ多いほど「アンテナの処理待ち時間」や「同時に送受信できる情報量」が増えます。
パソコンでいえばCPUのコア数が増えるみたいなもんで、同時に処理できる情報が増えるイメージですね。つまり下位のルーターから乗り換えると速さ・安定感アップが期待できます。
- 家族で同時にスマホ見まくるとWi-Fiすごい遅くなるんだよなあ…
- スマホでゲームしてるとどうもラグが気になる…
みたいな人は家のWi-Fiが快適になる可能性が高いです。ということで使い心地をレビューしていきます。
Archer AX80の使用感まとめ
サクッと知りたい方向けに、2週間ほど使ってみた感想を先にまとめます!
- 2.5Gbps WANに対応している
- ストリーム数が多い(合計8ストリーム)ので処理待ちや遅延が少ない
- 設定が簡単
- アンテナ内蔵なので設置する向きが自由
- サイズがやや大きめ
ざっくりまとめるとこんな感じの使い心地でした。
家の回線が1Gbpsなので実はこの製品の「本気の速度」は体験できてないのですが、それでも電波が安定したな~という実感はあります。例えばWi-Fi接続でスマホのオンラインゲームをしてるとき、画面がカクつく頻度が下がりました。
Archer AX80の詳細レビュー
ここから先は、Archer AX80を2週間ほど使ってみた感想をまとめた詳細レビューです。
詳しい使い勝手を知りたい人は参考にしてみてください。
外観のデザイン
昔のルーターはこういうデザインが主流でしたよね。
最近のルーターはアンテナが何本も生えているデザインが多いので、逆に珍しいのかもしれません。
個人的にはこうやってアンテナ内蔵にしてくれたほうが「アンテナこれどっち向けたほうが電波いいんだ?最適解はなんなんだ?」とか考えずに済むので、精神的に楽ですねw
初期設定は簡単だったか?
初期設定はTP-Linkの「Tether」というアプリを使います。
指示に従って「次へ」とタップを繰り返しているだけで設定が終わりました。
「接続タイプを選択する」という項目が分からなくて困りましたが、自動検出をタップしたら勝手に選択されたので悩む必要ありませんでしたw
「Tetherというアプリを使う」ことさえ分かったら、あとは説明書を読むまでもなく設定できるぐらい簡単でしたね。
Wi-Fi接続は安定しているか?
今住んでいる家に越してきてからはArcher AX20、Deco S7、Archer AX80というWi-Fiルーター遍歴を巡っていますが、今までで最も通信が安定している実感はありますね。
一つ前にレビューしたTP-LinkのメッシュWi-Fiルーター「Deco S7」はWi-Fi 6に対応していないモデルだったので、
- 筆者がNetflixで4K作品を視聴しながら、
- 妻がスマホでインスタを見ながら、
- 娘がYouTubeを次々と閲覧しまくる
みたいな使い方をするとNetflixの読み込みに時間がかかることも正直ありました。でもArcher AX80を使い始めてからはその程度の負荷では一切途切れなくなりましたね。
また、以前に使っていたTP-LinkのWi-Fi 6対応ルーター「Archer AX20」と比べると、ルーター設置場所から一番離れた部屋からも安定して通信できるようになった感じがします。
AX20は壁際に行くと通信が途切れたり極端に遅くなる場面があったのですが、AX80では今のところ遅くなることすらありません。
ちなみに回線スピードテストをしてみるとこんな結果になりました。
計測時刻はどちらも月曜日のお昼1時ちょい前ぐらい。
うちは有線でもせいぜい500Mbps程度しか出ない環境なので、Wi-Fiで400Mbps近く出るのは理論値に近い速度じゃないでしょうか?
それに、このルーターは2.5Gbps WANに対応しているので、我が家(1Gbps回線)では本領発揮すら出来ていないんですよねw
今の筆者の家にはオーバースペックな高性能ルーターですね…。
AX20とAX80の性能比較
同じWi-Fi 6ルーターの下位機種であるAX20とスペックを比較してみます。
Archer AX20 6,160円 | Archer AX80 16,800円 | |
---|---|---|
規格 | Wi-Fi 6 | Wi-Fi 6 |
Wi-Fi速度 | AX1800 5 GHz: 1201 Mbps (802.11ax) 2.4 GHz: 574 Mbps (802.11ax) | AX6000 5GHz:4804Mbps(802.11ax, HE160) 2.4 GHz:1148Mbps(802.11ax) |
ストリーム数 | 4ストリーム 2.4GHz: 2×2 5GHz: 2×2 | 8ストリーム 2.4GHz: 4×4 5GHz: 4×4 |
有線ポート | ギガビットWANポート×1 ギガビットLANポート×4 | 2.5ギガビットWAN/LANポート×1 ギガビットWAN/LANポート×1 ギガビットLANポート×3 |
WANタイプ | 動的IP 静的IP PPPoE PPTP L2TP v6プラス★ DS-Lite★ MAP-E(OCN)★ ★: ファームウェアアップデートであとから追加された | 動的IP 静的IP PPPoE PPTP L2TP v6プラス DS-Lite MAP-E(OCN) |
5GHzのリンク速度が4倍、ストリーム数も2倍の差がありますね。
ストリーム数とは、簡単にいえば「アンテナの本数」のことです。2×2という数字は「送信アンテナ2本、受信アンテナ2本」という意味。つまりAX80はアンテナの本数がAX20の2倍ということになります。
同じWi-Fi 6対応ルーターでもアンテナの本数が倍も違うとなれば、そりゃ安定性も増しますよね…。
またAX80はv6プラス、DS-Lite、MAP-E(OCN)といった、いわゆるIPv6インターネットに対応しているのも大きな要因な気がします。というかむしろ、AX20はIPv6非対応だったのか。
Wi-Fi 6だったら全部速いんじゃね?程度の認識しか無かったので、勉強になりましたw
通信安定性が高いルーターを選びたい人は、Wi-Fi 6対応ルーターの中でも「ストリーム数が4×4以上」のモデルを選んだほうがいいかもしれません。
セキュリティ機能について
先ほども例に出したAX20と比較すると、このぐらいの機能差があります。
Archer AX20 6,160円 | Archer AX80 16,800円 | |
---|---|---|
Wi-Fi暗号化 | WPA WPA2 WPA3 WPA/WPA2-Enterprise (802.1x) | WPA WPA2 WPA3 WPA/WPA2-Enterprise (802.1x) |
ネットワークセキュリティ | SPIファイアウォール アクセスコントロール IP & MACバインディング アプリケーション層ゲートウェイ | SPIファイアウォール アクセスコントロール IP & MACバインディング アプリケーション層ゲートウェイ HomeShield セキュリティ リアルタイムIoT保護 悪意のあるサイトのブロック 侵入防止システム DDoS攻撃の防止 ホームネットワークスキャナー |
VPNサーバー | OpenVPN PPTP | OpenVPN PPTP L2TP |
AX20にはない「HomeShield」というセキュリティサービスが増えていますが、公式HPをよく読むと「※ IPv6 IPoE接続時及びブリッジモード動作時は利用できません」という文言があります。これはちょっと罠ですね。
筆者はHomeShieldを使う予定は特にないので気にしていませんが、この機能に期待している人は要注意ですね。
管理画面の使いやすさ
設定の管理はTP-Linkのアプリ「Tether」か、もしくはブラウザから「http://tplinkwifi.net/」にアクセスして行います。
初期設定および一般ユーザーが使うような設定はすべてアプリで出来ますが、一部の詳細な設定(Wi-Fiの電波を飛ばすチャネルを手動で選ぶとか)はブラウザからのみ行えるようでした。
他社と比較すると、TP-Linkは管理画面の分かりやすさ(取っつきやすさ)は優れていると思いますね。
以前使っていた某社のルーターはそもそも設定用のアプリなんてものすら無かった記憶。。。
コストパフォーマンス
記事執筆時点(2023/01/16)ではAmazonでの売価が16,800円。
表示されている1600円引きクーポンを適用すると実質15,200円でした。
Googleで「Wi-Fi 6 8ストリームルーター」と検索すると同じく16,000円前後の製品が多い印象でしたので、AX80の価格は
- 通常価格で買っても割高ではない
- クーポンを適用すれば相場よりはちょい安い
って感じですかね。
ただし普通の1Gbps回線しか契約してない人が買うにはオーバースペックなので、あくまでも2.5G以上のハイスピード回線を敷いてる人向けの商品だと思いますね。
付属のLANケーブルは「CAT5e」なのに、なんで2.5Gbps出せるの…?
付属品として同梱されているのはご覧の通り「CAT5e」規格のLANケーブルです。
…と書くと、LANケーブルの規格について”昔から知っている人”は、
「えっ?CAT5eじゃ1Gbpsまでしか出ないんじゃ?」
「1Gbps以上必要なときはCAT6aのケーブルが必要では?」
と思ったのではないでしょうか。
たしかに1ギガビット通信(1000BASE-T)と10ギガビット通信(10GBASE-T)しか無かった頃はそれが常識でしたから、筆者もこの記事を書いている途中までそう思っていました!
しかし2016年に「2.5GBASE-T」および「5GBASE-T」という新しい規格が誕生しており、この新規格に対応した機器はCAT5eケーブルでも1Gbps以上の通信速度が出せるのです。
Amazonレビューにも「付属品がCAT5eケーブルだったから自分でCAT6aケーブル買った!プンスカ」みたいなコメントがあったりしますし、筆者も当然のようにCAT5eじゃダメじゃね?と思っていたのですが…実はCAT5eケーブルでも大丈夫なんですって。
ただしプロバイダから貸与されているホームゲートウェイが古い製品だと、もしかしたら2.5GBASE-Tに対応していない場合があるかもしれません。不安な場合は家にあるホームゲートウェイの型番をGoogleで検索して仕様表を見てみることをおすすめします。
試しに「auひかり ホーム10ギガ・5ギガ」を契約したときに貸与されるホームゲートウェイ「BL3000HM」の仕様表を確認してみたところ、しっかり2.5GBASE-Tの記載がありました。まぁ当然か…。
Archer AX80はどんなユーザーにおすすめ?
主には1Gbps以上のハイスピード回線(nuro 光やauひかりホーム10ギガみたいな高いプランのことね)を契約している人に向けた高性能ルーターです。
筆者のように1G回線しか敷いてない人が使うと、宝の持ち腐れ感が否めません。ストリーム数が多いことによる通信安定性アップは体験できますが、速度を上げたいなら光回線のプランを見直すほうが先でしょう。
ただ、逆に言えば「そのわずかな通信安定性アップを求めてるんよ!」というこだわり派のユーザーは導入する価値ありです。些細なラグやプチ切断が命取りになるオンラインゲームをよくプレイするなら、AX80を導入することで「Wi-Fiがマシになった」と実感できるはずですよ。
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